K・アンダーソンが貫禄の優勝(プネー/インド)

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大器晩成

ATPランキング6位のK・アンダーソンがツアー開幕戦のプネーのタイトルを獲得した。

No.1シードがアンダーソンで、No.2シードは25位のチョン・ヒョンだった。チョン・ヒョンは昨シーズンの前半大活躍した韓国期待の22歳ではあるが、昨シーズンの後半は、足の怪我のために欠場が続くなど苦しい時期を過ごした。

そのチョン・ヒョンも含めて、シード選手8人のうち3人の選手は、まだATPツアーでの優勝経験が無い。シード選手の中で、ツアーでの1勝を上げているのが、フランスのペールとスペインのカルバレス・バエナの2人。ツアーで複数の優勝経験があるのは、アンダーソンの他、フランスのシモンとスペインのアンドゥハルの3人だけという状況である。

アンダーソンが大本命といって良いドローだったことは間違いない。

しかし、今でこそランキングのトップ10に定着しているアンダーソンだが、初めてトップ10に入ったのは、まだ1年前にもならない2018年2月のことである。

ツアーでの優勝回数も、このプネーを含めて6勝で、1シーズンに2勝をあげたのは昨年が初めてのことである。

アンダーソンは、かなり遅咲きの選手と言って良いだろう。

グランドスラムでの成績もそれを示している。

アンダーソンは過去43回のグランドスラムに出場しているが、2008年の全豪で初出場してから、2010年の全米で本戦初勝利をあげるまで2年半以上を要している。その全米でアンダーソンは2回戦も突破したが、初めて3回戦を抜けてベスト16に入ったのは2013年の全豪で、本戦での初勝利から、やはり2年以上の時間が掛かり、初めてベスト8に入ったのは2015年のウィンブルドンで、これまた2年以上、そして2017年の全米でベスト4を飛び越えて初の決勝に進出したが、これも2年以上の時間がたっている。

アンダーソンの過去43回のグランドスラムの出場結果は、予選敗退が5回、1回戦負けが13回、2回戦負けが3回、3回戦負けが8回、ベスト16が11回、ベスト8が1回、準優勝が2回となっている。

ベスト16が11回もあるのに、ベスト8以上は3回しかなく、しかもそれは割と最近の話なのだ。

しかし、たとえ時間が掛かっていたとしても、アンダーソンが着実にステップアップしていることも間違いない。数年前までは万年中堅選手という雰囲気が濃厚だったアンダーソンが、気付けばトップのすぐ真下まで上がって来ているのだ。

そして、これまでの流れを踏まえれば、アンダーソンが初めて決勝に進出した2017年から2年が経つこの2019年に、アンダーソンにとって、残された最後のステップであるグランドスラム制覇に辿り着いてもおかしくはないということになる。

今年の5月で33歳になるアンダーソンだが、オープン化以降のグランドスラムで初優勝した時の年齢が最も高いアンドレス・ヒメノは、34歳の時に1972年の全仏で初優勝している。今シーズン幸先の良いスタートを切ったアンダーソンにもまだ十分チャンスはあるはずだ。

最強ビッグサーバー

プネーの準優勝は、クロアチアのカルロビッチだった。

フルセットとなったアンダーソンとの決勝戦は全てタイブレーク決着となり、カルロビッチにとっては、ほんのわずかの差でタイトルを逃す悔しい幕切れとなった。

カルロビッチは現在のツアーはもちろん、おそらくテニスの歴史上においても屈指のサーバーである。

■ビッグサーバーランキング(1試合当たりのサービスエース本数順)
※TB=タイブレーク
 選手エースキープ率勝率TB数/試合TB勝率
1イボ・カルロビッチ19.792.1%52.7%1.1150.1%
2ジョン・イスナー18.091.6%61.8%1.0261.1%
3ウェイン・アーサーズ15.888.2%45.5%0.8845.3%
4サム・グロス15.484.5%38.0%0.8048.8%
5ミロシュ・ラオニッチ15.190.9%68.5%0.6961.8%
6クリス・グシオネ14.686.4%40.9%0.8950.0%
7ニック・キリオス14.587.7%63.5%0.7358.9%
8ヨアキム・ヨハンソン14.389.3%55.0%0.6948.9%
9ゴラン・イバニセビッチ13.985.7%64.3%0.5257.1%
10マーク・フィリポーシス13.985.2%60.5%0.6052.4%

1試合あたりの平均サービスエース数の通算記録を見ると、カルロビッチとイスナーが飛び抜けて多いことが分かる。

ビッグサーバーとして名高いフィリポーシスやイワニセビッチでさえ、14本に届かないというのに、イスナーは18本、そしてカルロビッチは20本に届こうかという数字である。ちなみに日本の錦織の平均サービスエース数は3.4本、松岡修造でも7.7本である。

そんな強力なサーブを持つカルロビッチのサービスゲームキープ率は当然高く、キャリア通算で92.1%にもなる。この数字も歴代1位である。あのサンプラスや、フェデラーでも90%に届かないことを考えると、いかにカルロビッチがサービスゲームで強いかということが分かる。

しかし、カルロビッチの通算勝率は52.7%にとどまっている。ATPランキングは最高14位で、ツアー優勝数も8回である。十分立派な成績ではあるが、ビッグタイトルは無く、史上最高のビッグサーバーとしては物足りない感じもしてしまう。

サーブの強いカルロビッチがなぜ無敵ではないのか?

それは当然、リターンゲームが強くないのである。それもちょっとやそっとのレベルではない。

カルロビッチのリターンゲーム獲得率は、通算で8.7%しかないのだ。逆から見ると、カルロビッチの対戦相手のサービスゲームキープ率が91.3%に達することを意味している。

カルロビッチのサービスゲームキープ率は確かに高いが、同じように対戦相手のサービスゲームキープ率も高くなってしまうため、結局良い勝負ということになってしまうことになるのだ。

そして、お互いのサービスゲームキープが続くと、タイブレークに突入することになる。

その独特なプレースタイル故に、カルロビッチのタイブレーク突入率は極めて高い。

カルロビッチのこれまでのATPツアーレベルでの通算試合数は685試合だが、通算のタイブレーク回数は761回である。なんと、1試合につきタイブレークが1.11回あるという計算になる。

確かに1試合で複数回タイブレークを戦うことはあるものの、通算試合数より通算のタイブレーク数の方が多い選手はそれほどいないだろう。

サービスエースの多いビッグサーバーの数字を見ても、イスナーが、通算636試合でタイブレークは647回で1試合につきタイブレーク回数は1.02となっているが、他のビッグサーバーは皆タイブレーク回数の方が試合数よりも少なくなっている。

また、1発勝負の要素が強いタイブレークに入ると、1発で決める力のある強力なサーブを持つ方が有利になりそうな印象があるが、サービスエースの多いビッグサーバーの場合でも、タイブレークの方が勝率が悪くなっている。先ほどのランキングで見ても、通算勝率よりもタイブレークの方が勝率が高いのは、通算試合数が100試合に満たない選手だけである。

カルロビッチも通算勝率は52.7%だが、通算のタイブレーク勝率は50.1%に落ちてしまう。

このプネーでも、決勝戦でタイブレークを2つ落としたために、K・アンダーソンに屈することとなった。カルロビッチとしても、なるべくならタイブレーク決着は避けたいというのが本音だろう。

しかし、これまでの確率はどうであれ、タイブレークの勝敗はやってみなければ分からないことも間違いない。

そして、今年40歳になるカルロビッチに、今さら新しいプレースタイルを求めるのは酷だろう。

幸いなことに、カルロビッチのサービス力は今のところ衰えが見られない。

カルロビッチが過去に出場した四大大会で唯一ベスト8に進出した2009年のウィンブルドンでは、ツォンガ、ベルダスコといった当時のトップ10選手を相手に、2試合で6回のタイブレークを戦い、その内の4回を取ることで勝利につなげている。

サーブを決め続ければ、何かが起こるかもしれない。

そう信じてカルロビッチは今シーズンもサーブを打ち続けるだろう。

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