錦織は決勝で弱い?(3)

日本人選手

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決勝戦の対戦相手

ビッグ4の4人はあれだけのタイトル数にもかかわらず、決勝での連敗はナダルの4連敗が最大で、他の3人は3連敗にとどまっている。彼らは続けて負けていないのだ。これは簡単なことではない。ツアーの決勝に出てくるのはランクや調子も含めてその大会で強い選手ばかりだ。ただ、錦織が獲得した11回のタイトルの決勝戦の対戦相手を並べてみると気になることが浮かび上がる。


■錦織が優勝した決勝戦の対戦相手
大会対戦相手錦織の世界ランキング(当時)
デルレイビーチ(2008年)ブレーク(12位)244位
東京(2012年)ラオニッチ(15位)17位
メンフィス(2013年)ロペス(47位)22位
メンフィス(2014年)カロビッチ(80位)16位
バルセロナ(2014年)ヒラルド(65位)17位
クアラルンプール(2014年)ベネトー(28位)8位
東京(2014年)ラオニッチ(8位)7位
メンフィス(2015年)アンダーソン(15位)5位
バルセロナ(2015年)アンドゥハル(66位)
5位
ワシントン(2015年)イズナー(18位)5位
メンフィス(2016年)フリッツ(145位)7位

錦織が勝ち取ったタイトルの決勝戦の相手でトップ10クラスの選手は初優勝の時のブレークと東京で2回破ったラオニッチ、2015年のメンフィスで倒したアンダーソン、同じ2015年のワシントンで破ったイズナーと4人いる。彼らはもちろん強豪選手だが、例えばビッグ4クラスと比べると一段落ちる選手であることも間違いないだろう。

ロペス、カロビッチ、アンドゥハルあたりは中堅選手と言えるだろうが、もちろん錦織から見ると勝てない相手とは言えない。そして、ベネトー、ヒラルド、フリッツの3人に至ってはツアータイトルを獲得したことがないのだ。

実は、錦織がツアー決勝戦で自分のランキングより上の選手に勝利を収めたのは、錦織が244位の時に当時世界ランク12位のジェームズ・ブレークに勝利した驚きの初優勝と、錦織が17位の時に15位のラオニッチを倒した2012年の楽天オープンでのツアー2度目の優勝の時の2回しかない。

他に錦織はランキング上で格上の相手とは、フェデラーと1回、ナダルと2回、ジョコビッチと2回の計5回決勝で対戦しているが、全て敗れている。錦織の決勝での11敗のうち、残りの6回は錦織よりもランキングが下位の対戦相手に苦杯をなめた戦いということになり、怪我からの復帰直後の錦織が61位の時のライアン・スウィーティング(当時93位)戦、錦織が11位の時の全米の決勝のチリッチ(当時16位)戦、錦織が5位の時の2015年アカプルコのフェレール(当時9位)戦、そして昨年から続く6連敗のうちの後半の3連敗(チリッチ、ディミトロフ、ドルゴポロフ)がその対戦相手となる。

格下(というほど弱い相手ではないことも確かだが)の相手にきっちり勝つ。これも確かに重要なことだが、格上の相手を倒さなければ、上に登ることも出来ない。ナダルは決勝での4連敗の他に3連敗を3回喫しているが、決勝での最大の連勝数は14、他にも9連勝を1回、7連勝を2回という優れた結果も残している。マレーは6連勝が2回、ジョコビッチは10連勝の他に9連勝が1回、極めつきはフェデラーでツアー決勝24連勝という異次元の記録を残している。格下相手に勝ち切るのはもはや当然のものとして、格上、あるいは同レベルの選手にも勝っていかなければ、このような記録は残せないだろう。そしてトップ選手が集結するマスターズ、グランドスラムで優勝するためには、おそらくそれが必要になるのだ。

錦織は、トップ選手をツアーの決勝で破るという壁をまだ越えていない。

しかし、壁が高ければ、越えたときに得られるものも大きいかもしれない。

対戦相手を決めることは出来ないが、今シーズン、錦織がツアーの決勝でビッグ4の誰かを破って優勝を成し遂げることが出来れば、それは錦織の可能性を広げる大きな1勝となる可能性もあるはずだ。

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