全豪前哨戦ブリスベン、錦織の準優勝が意味するもの

全豪オープン

全豪の前哨戦で過去最高の成績

全豪オープンの前哨戦となるブリスベンで錦織は準優勝という結果を残した。決勝でディミトロフに敗れたものの、準決勝では2014年の全豪チャンピオンでもある強敵ワウリンカをストレートで破って勝利している。いよいよ開幕する全豪オープンでの活躍への期待はどうしても高まってしまう。


しかも、全豪オープンの前哨戦での準優勝という結果は、錦織にとって過去最高の成績なのである。

■錦織の全豪前哨戦と全豪での戦績
前哨戦全豪オープン
2017年ブリスベン:準優勝
2016年ブリスベン:ベスト8ベスト8
2015年ブリスベン:ベスト4ベスト8
2014年ブリスベン:ベスト16ベスト16
2013年ブリスベン:ベスト4ベスト16
2012年ブリスベン:ベスト16ベスト8
2011年チェンナイ:ベスト8ベスト32
2010年--
2009年ブリスベン:ベスト8/オークランド:1回戦1回戦敗退

錦織の全豪オープンの前哨戦とその後の全豪オープンでの成績を見ると、全豪は過去5年でベスト8が3回、前哨戦は2011年のチェンナイの他は全てブリスベンに出場し、過去5年でベスト8以上が4回とかなり高いレベルで安定している。

今年、前哨戦で最高の成績を残したということは、全豪オープンでも過去最高の成績を残せるはず!

ベスト4、いや、優勝だって決して夢ではない!

そう思いたいところである。

しかし、もちろん現実はそんなに甘くないのだ。

前哨戦の成績は全豪の成績とリンクしない

全豪オープンの前哨戦と位置づけられるトーナメントは、全豪オープンの2週前に開催されるブリスベン、チェンナイ、ドーハの3つと、全豪オープンの前週に開催されるオークランドとシドニーの2つと、合わせて5大会ある。2008年まで開催されていたアデレードが2009年からブリスベンに代わってはいるものの、スケジュール自体は同じである。

選手にとって貴重なオフシーズンの後に始まるこの5大会は、全豪への準備という意味合いだけでなく、多くの選手にとって1年間というシーズンの戦いを見すえた上での最初のトーナメントとなる。特にブリスベン、チェンナイ、ドーハの3大会は、前年の年末から大会がスタートすることが多く、選手ごとにフィジカルコンディションの仕上がりにバラツキがあることは仕方のないことだろう。

また、前哨戦の5大会はどの大会も格付けはATP250で同じなので、ランキング上位の選手ほど全豪オープンへの入り方を考えながらスケジュールを組むこととなる。体調管理を優先できる有力選手は全豪オープン2週前の3つの大会のどれかに出場するか、前哨戦には出場せず全豪オープンをそのシーズンの開幕戦とするかのどちらかのパターンを選ぶことが多く、色々と余裕が無いランキング下位の選手の場合は、ポイントや賞金を得るために全豪オープンまで3週連続でエントリーすることも珍しくない。

調整という要素が他の時期よりも多いことが影響しているせいか、結果として全豪オープンの前哨戦となる5大会の成績でその選手の実力を測ることはとても難しいことになっている。

2000年以降の17年間を通じて全豪オープンの前哨戦5大会は開催が中止されることなどもなく、合計すると全部で85大会開催されている。2000年にヒューイットがアデレードと翌週のシドニーで、2004年にフルバティがアデレードと翌週のオークランドでそれぞれ2連勝しているため、85大会での優勝者は83人。そしてその83人のうちで、前哨戦で優勝し、その後の全豪オープンでも優勝をすることが出来たのは、なんとたったの3人、2006年のフェデラー(ドーハと全豪)、2014年のワウリンカ(チェンナイと全豪)、2016年のジョコビッチ(ドーハと全豪)だけなのである。

、、、これは実に少ない。

2000年以降に開催された17回の全豪オープンにおける優勝者のうち、前哨戦5大会のどれかを優勝した上で全豪も制することも出来たのが前述の3人、前哨戦ではどこかのラウンドで負けたが、全豪は制することが出来たのが4人(2015年のジョコビッチ、2010年のフェデラー、2009年のナダル、2002年のヨハンソン)である。そして最も多いパターンが、前哨戦を戦わずに全豪を制したという10人ということになっている。

■2000年以降の全豪オープン優勝者と前哨戦の成績
全豪優勝選手前哨戦
2016年ジョコビッチドーハ:優勝
2015年ジョコビッチドーハ:ベスト8
2014年ワウリンカチェンナイ:優勝
2013年ジョコビッチ
2012年ジョコビッチ
2011年ジョコビッチ
2010年フェデラードーハ:ベスト4
2009年ナダルドーハ:ベスト8
2008年ジョコビッチ
2007年フェデラー
2006年フェデラードーハ:優勝
2005年サフィン
2004年フェデラー
2003年アガシ
2002年ヨハンソンチェンナイ:ベスト8
シドニー:初戦敗退
2001年アガシ
2000年アガシ

コンディションをきっちり整えれば、別に前哨戦は必要ない。

この実績を見てしまうと、前哨戦の成績などどうでも良いことにも思えてしまう。

ちなみに上記の表を見れば分かるが、錦織と同じく前哨戦を優勝ではなく、決勝で敗れて惜しくも準優勝にとどまった選手が全豪を制したパターンは2000年以降ではゼロである。それどころか実は前哨戦を準優勝した選手は、全豪オープンでの決勝進出自体も無く、最高はベスト4止まり(2000年以降の全豪前哨戦を準優勝した85人の選手の中で6人)となっている。

厳しい。

実に厳しい。

そして、極め付けが今回のドロー発表である。

錦織は全豪準優勝5回という、ある意味狂気じみた実績を持つマレーの山に入り、隠れキャラとしてフェデラーまで持ってきてしまった。錦織が順調に勝ち上がることが出来たとしても、周囲も順当に勝ち上がって来た場合、ベスト8入りを賭けてフェデラー(シード順では一応ベルディヒ)と、ベスト4入りを賭けてマレーと、決勝進出を賭けてワウリンカと、そして決勝では全豪史上最多6回優勝のジョコビッチと激突した上で、全部に勝てば優勝という、錦織サイドに立つと、ちょっと現実逃避したくなるほどのスペシャルドローとなっている。

色々な意味で前哨戦の結果なんて、もうどうでも良いのである。

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