全豪オープン 誰ならジョコビッチとマレーを止められる?

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圧倒的な優勝候補の2人

今回の全豪オープン男子シングルスの優勝候補がジョコビッチとマレーであることに異論を挟む人は少ないだろう。

なにしろ、全豪オープンでの彼らの成績は飛び抜けている。


ジョコビッチはプロデビュー以来、出場した12回の全豪オープンを通じて史上最多となる通算6回もの優勝を成し遂げ、マレーは直近の7回の出場で5回も決勝に進出している。マレーは決勝戦で全敗しており、全て準優勝に終わっている上に5回の敗戦のうち、4回はジョコビッチに喫したものである。グランドスラムの決勝で5回負け続けることの辛さは想像するのも難しいが、マレーの実力が確かなものであるということも間違いないだろう。もしも、ジョコビッチがいなければ、、、ついそう考えてしまいそうになるくらいの好成績である。そして、昨シーズンの終わりについにマレーがナンバー1に到達し、マレーはナンバー1シードとして初めてのグランドスラムを迎えている。

■ジョコビッチとマレーの全豪オープンでの成績
 ƒジョコビッチマレー
2016”年—優勝準優勝€—Ÿ
2015”年—Ÿ—優勝準優勝€—Ÿ
2014”年ベスト8ベスト8
2013”年—優勝準優勝€—Ÿ
2012”年—優勝ベスト4
2011”年——優勝準優勝€—Ÿ
2010”年ベスト8準優勝€—Ÿ
2009”年ベスト8ベスト16
2008”年—優勝初戦敗退
2007”年ベスト16ベスト16
2006”年初戦敗退初戦敗退
2005”年初戦敗退-

ナンバー1となったマレーはジョコビッチを破って全豪オープンを制することが出来るのか?

マレーとジョコビッチの間でのこのトップ争いが今年の全豪オープンの大きな見所であることは間違いない。

しかし。

スポーツの世界で、優勝候補がすんなりと優勝できないことはちっとも珍しいことではない。

全豪オープンはすでに1回戦が終了しているが、この後の戦いで再び決勝を目指す二人をその途上で、たとえばベスト8への進出までに彼らを止めることの出来る選手はいるのだろうか?

マレーの場合

マレーの2回戦の相手は予選から勝ち上がったロシアのルブレフに決定している。

世界ランク152位のルブレフは、まだ19歳だが、ジュニアでナンバー1になったことがある有望な若手選手である。しかし、まだキャリア通算で32戦(13勝)しかしておらず、グランドスラムに限れば、この全豪の1回戦が通算で2度目の試合というキャリアの浅さである。まだトップ10に勝ったことがない19歳が、800戦以上の試合を経験している世界ナンバー1に初めて挑戦して3セットを取ることが出来たら、もうそれで今シーズン最大、ツアーに激震が走るほどの番狂わせとなるだろう。マレーが6年近く前の2011年3月に当時118位のボゴモロフJr.に負けて以来、世界ランク100位以下の選手に負けていないことと合わせて考えると、このラウンドでのマレーの勝利はほとんど揺るがないだろう。

19歳の挑戦を退け、3回戦でマレーが対戦する可能性のある選手は、今大会の最年少選手、地元オーストラリアの17歳のデ・マイナーと、第31シード、アメリカのビッグサーバー、クエリーの対戦の勝者となる。

デ・マイナーの現在の世界ランクは300位に過ぎないが、全豪前哨戦のブリスベンで注目の若手選手であるアメリカのティアフォを、そしてシドニーでフランスのペールを破っており、デ・マイナー自身も有望な若手選手であることを証明している。しかし、ロシアのルブレフ同様、現時点で5セットマッチを戦ってマレーに勝ちきるのはさすがに難しいだろう。もしも世界ランク300位台の17歳がナンバー1を破るようなことがあれば、ルブレフ以上のビッグニュースとなるだろう。ただ、デ・マイナーがクエリーに勝利して、マレーとの対戦が決まったときには地元の会場が最年少選手への声援で相当盛り上がることは間違いないだろう。マレーには大きなプレッシャーがかかるかもしれないが、まあそれでもマレーを屈服させることは恐らくないだろう。

現実問題、マレーにとって要注意なのは、クエリーが有望な若手を危なげなく退けて勝ち上がってきた場合となる。なにしろクエリーは昨年のウィンブルドンの3回戦でジョコビッチを破る特大の金星を上げている。マレーとの直接対決ではマレーの6勝1敗となっており、マレーが有利なのは確かだが、乗りに乗ったクエリーが恐ろしく手強いことは既に証明されているのだ。クエリーが番狂わせを起こす可能性は、決してゼロではないだろう。

そして微妙な難敵クエリー、あるいはデ・マイナーを退けると、マレーはベスト8入りを賭けた4回戦に臨むことになる。このラウンドでは第16シードのプイユ、第19シードのイスナーとの対戦の可能性があったが、プイユは既に1回戦で敗退したため、シード選手はイスナーしか残っていない。そして、このラウンドはマレーにとってボーナスステージとなる可能性が高い。

イスナーが順当に勝ち上がって来たとしても、このラウンドでのマレーの優位は揺らぎそうにもない。マレーとイスナーは過去に8回対戦し、マレーの8勝0敗である。ビッグサーバーのイスナーと、リターン巧者のマレーとの対戦は、イスナーにとって、ものすごく悪い形で噛み合ってしまっているのかもしれない。イスナーが上がって来てもそれほど怖くないということが、マレーにとってこのラウンドを容易いものとしてしまっている。

4回戦でマレーが対戦する可能性がある選手の中で、イスナーの次にランクが高いのはドイツのミーシャ・ズベレフとなる。弟のアレクサンダーは超有望選手として注目を集めているが、兄のミーシャも世界ランク50位となかなか侮れない位置にいる。ただ、兄弟と言っても、兄のミーシャはアレクサンダーよりも10歳年上で、実はマレーと同じ29歳である。マレーとのATPツアーでの対戦は2015年に1度あり、マレーがストレートでミーシャを破っている。同い年の二人はフューチャーズ時代にも対戦していて、やはりマレーが2戦して2勝している。前哨戦のブリスベンでは17歳のデ・マイナーに勝利しているが、2回戦でナダルに1-6、1-6のストレート負け、続くシドニーではスペインのアルマグロに勝利するが、やはり2回戦で同じスペインのカレーニョ・ブスタに敗戦。ランキング通りと言えばそれまでだが、ミーシャ・ズベレフに特に勢いがあるという感じが全くしないのも確かである。やはり、マレーを倒すのは荷が重いという印象は否めないし、イスナーを倒してベスト32に進出することが出来たら、それだけで十分な結果と言えるだろう。

次にランクが高いのはランキング56位、1回戦で日本の添田を倒したチュニジアのジャジリとなる。32歳のジャジリはこれまで主にチャレンジャーを主戦場としており、ATPツアーでの試合は130戦ほどにとどまっている。トップ10選手との対戦も8度しかなく、勝利もない。マレーとの対戦はこれまで1度もなく、対戦すれば初顔合わせとなるが、ジャジリがナンバー1に勝てる要素は多くないだろう。しかし、過去にベスト32進出が1度しかないジャジリにとって、今回の全豪のドローはチャンスと言えるだろう。2回戦で対戦するカザフスタンのブブリクが第16シードのプイユを倒してくれたため、ランキング207位のブブリクを倒せばキャリア2度目のベスト32に進出することが出来るのだ。さらにそこで第19シードのイスナーさえ倒すことが出来れば、初のグランドスラムベスト16に到達することも出来る。もしも、イスナーが2回戦で敗退し、ランキング50位のミーシャ・ズベレフが勝ち上がって来てくれた場合は、さらにチャンスが広がるのだ。まあ、なかなかそう上手くはいかないとは思うが、2回戦に臨むジャジリの鼻息が荒くなっていてもおかしくはない。マレーのところまで辿り着ければ十分という点で、ジャジリとミーシャ・ズベレフは一致している。

現時点で4回戦でマレーが対戦する可能性がある選手の最後となるのが、第16シードのプイユを倒したカザフスタンの19歳、ブブリクである。まだATPツアーで4戦しかしておらず、ランキングは207位にすぎない。フューチャーズでは4つの優勝があるものの、チャレンジャーレベルでもまだ優勝がない。セットカウント3-1で勝利したプイユ戦ではファーストサーブが入った時のポイント獲得率は86%に達しており、サービスエースも16本奪っている。193cmの長身を生かしたサーブを武器に攻撃をする選手だと思われるが、現時点ではまだ情報が少なく、ある意味不気味な存在である。2回戦のジャジリ、そしてさらにイスナーかズベレフ兄を簡単に破って来るようなことがあると、突然の新星誕生ということになるかもしれない。しかし、そうではなく、万が一勝ち上がったとしてもフルセットやタイブレーク連発でギリギリだったという状態であれば、さらにその次のラウンドでマレーに勝利をおさめることはちょっと考えにくいだろう。

結論として、現在のドローを見る限り、マレーのベスト8進出を阻むことが出来るのは、恐らく3回戦で当たる可能性があるクエリーのみということになる。クエリーが2回戦で負けた場合は、マレーはほぼ確実にベスト8まで到達し、もしクエリーと対戦することになっても、相当な高確率でベスト8まで進出するだろう。

ジョコビッチの場合

ジョコビッチは非常に危険な1回戦の対戦相手、スペインのベルダスコをストレートで下した。これでジョコビッチの上位進出への可能性は一気に広がったと言える。

ジョコビッチは、2回戦の対戦相手であるウズベキスタンのイストミンとは5回対戦しており、5勝0敗である。30歳のイスミトンのプレーが大幅に変わることも考えにくく、このラウンドでのジョコビッチの優位は揺るがないだろう。

無事にイストミン戦をクリアしたとすると、ジョコビッチの3回戦の対戦相手は第30シードであるスペインのカレーニョ・ブスタか、イギリス期待の若手エドマンドの勝者となる。カレーニョ・ブスタは25歳、エドマンドは22歳とどちらも若く、まだまだ伸びしろがあると思われるだけに、相当な勢いに乗ればという条件は付くものの、奇跡のアップセットという可能性はゼロではないかもしれない。

どちらかと言うとランキング通り、カレーニョ・ブスタの方がジョコビッチにとって厄介な相手となるだろう。ジョコビッチはカレーニョ・ブスタと2014年のモンテカルロで1度対戦しており、6-0、6-1と一蹴している。しかし、カレーニョ・ブスタは2016年に2つのタイトルを獲ったことで一気にランキングを上げている。2014年の対戦時からレベルアップしていることは間違いないだろう。トップ10選手に勝利した経験はまだないが、ガスケやバウティスタ・アグート、シモン、ベルダスコ、と言った中堅クラスの選手には勝利しており、その実力は侮れない。しかし、前哨戦のシドニーではベスト8でクズネツォフにフルセット負け、全豪の1回戦でもランキング132位、ラッキールーザーのポランスキー相手にフルセットの戦いを演じ、最後は相手の棄権で勝利をおさめており、決して調子が良いという感じがしないところが不安な要素だろう。

もう1人の3回戦の対戦相手候補、イギリスのエドマンドとジョコビッチは、昨年のマイアミと全米で2度対戦しており、いずれもセットを与えることなくジョコビッチがストレートで勝利している。どちらの試合でもジョコビッチがリターンでエドマンドにプレッシャーをかける形になっており、ビッグサーバーではないエドマンドにとって、ジョコビッチのリターンを攻略することは3度目の対戦をすることになって簡単なことではないだろう。ただ、エドマンドにとってプラスに働きそうなのが、エドマンドが好調を維持していることだろう。エドマンドは前哨戦のブリスベンでフランスのプイユを破り、ワウリンカには敗れたとはいえ、1セットを奪っている。今大会の1回戦もコロンビアのヒラルドにストレート勝ちをおさめており、2回戦で格上となるカレーニョ・ブスタから簡単に勝利をつかむようだと、勢いに乗っていると言える状態になるかもしれない。

しかし、例えどちらが対戦相手となったとしても、ジョコビッチにとって1回戦のベルダスコ戦と比べれば、3回戦はグッと楽に入ることの出来るラウンドとなることは間違いないだろう。

そして、ジョコビッチがベスト8入りを賭ける4回戦で対戦する可能性のある相手は、今のところ4人。第15シードのディミトロフ、第18シードのガスケ、アルゼンチンのベロック、韓国の20歳チョン・ヒョンである。

ジョコビッチはディミトロフとは7回対戦しており、通算6勝1敗。2013年にディミトロフが初勝利を上げてからはジョコビッチが4連勝中である。ただ昨年のパリマスターズでもジョコビッチはディミトロフに1セットを取られており、前哨戦のブリスベンで錦織を破って優勝しているディミトロフの調子の良さを考えると、非常に危険な相手となり得るだろう。ディミトロフが伸び盛りのチョン・ヒョンとの2回戦、順当に行けばガスケとの対戦となる3回戦で、その調子を維持することが出来るのか、注目に値する。絶好調のディミトロフとの対戦となると、さすがのジョコビッチも力を振り絞る必要が出て来るはずだ。

一方、もう1人のシードであるガスケが4回戦の相手となった場合は、ジョコビッチは楽にベスト8進出を決める可能性が高そうだ。ジョコビッチはガスケと13回対戦し、12勝1敗、しかも負けたのは2007年で、その後は現在まで10連勝中している。さらにその10戦でセットを取られたのは2013年のツアーファイナルでの1度のみで、他は5セットマッチのグランドスラムでの3度の対戦を含め、全てストレート勝ちしている。前に勝ったから、次も勝てるという保証は全くないが、ジョコビッチから見れば、ガスケはお得意様、ガスケサイドから見ると、ジョコビッチは天敵に近い存在と言えるだろう。

シードでない対戦候補、アルゼンチンのベロックが2回戦のガスケ、順当に進んだ場合のディミトロフを破って4回戦に進出してくることは、正直なところ難しいだろう。キャリア最高でランキング37位を記録したこともあるベロックだが、現在のランキングは90位、そしてキャリアを通じてグランドスラムでベロックが2回戦を突破したことはない。33歳のベロックがキャリア終盤にひと花咲かせてくる可能性はもちろんゼロではないが、ガスケ、ディミトロフと続く可能性のあるドローは決して楽なものではないだろう。そして見事にそこを突破したとしても、最後にジョコビッチとの対戦が待ち受ける。そこでベロックが勝利をおさめるという想定をすることは、ちょっと現実味が薄いだろう。

シードではないもう1人の対戦候補、韓国の若手、チョン・ヒョンは好調を保っている。前哨戦のチェンナイで予選から勝ち上がり、クロアチアのコリッチを破ってベスト16まで進出し、今大会の1回戦でもランキング79位で格上のオリーヴォをストレートで破っている。しかし、次にあたるディミトロフはチョン・ヒョンにとってはかなりの難敵と言わざるを得ない。チョン・ヒョンはランキング20位台以上の選手を相手にまだ勝利をおさめたことがない。ランキング15位のディミトロフは一時は8位まで上ったことがある上に、現在好調を維持している。ディミトロフを破ることが出来れば、一気に殻を破り、ネクストジェネレーションと呼ばれる若手選手の中でも一歩抜け出すことになるかもしれないが、さらに続けてランキング18位のガスケとの対戦が予想されるとなると、そこを抜け出してベスト16に辿り着くことは、アルゼンチンのベロックと同様に非常に困難なミッションとなるだろう。

結論として、ジョコビッチのベスト8入りを阻むことが出来る可能性が最も高いのは、結局のところランキングが一番高いディミトロフということになるだろう。ただ、ディミトロフサイドから見れば、ディミトロフの側が決死の戦いを挑むという形は揺るがない。次にカレーニョ・ブスタとエドマンドの若手コンビのどちらか、ということになるが、これは可能性がゼロではないというレベルの話で、若手が簡単にストレート負けしてしまうという方が確率としてはグッと高いだろう。

結局、マレーとジョコビッチはかなりの確率で順当にベスト8に進出して来ることになりそうなのだ。

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