グランドスラム決勝での連敗(1):イボンヌ・グーラゴング

グランドスラム

グランドスラム決勝での最大の連敗


グランドスラムの決勝戦という舞台に立てただけで成功。

テニス選手としてのキャリアを客観的に考えれば、そう言っても大きな間違いではないだろう。世界中のテニス選手の中でグランドスラムの決勝を戦うことが出来るのは、男女を合わせても一年で最大16人しかいない。同じ年に2回、3回と出場する選手が出れば、その分人数の枠はさらに減っていく。

しかし、たとえ準優勝者としての栄誉が保証されているとしても、あと1回勝てば頂点に立てるというところで、最後の敗者として大会を去らなければならないのは、相当な悔しさを伴うに違いない。戦ったばかりの勝者を讃えるスピーチをしながら涙ぐむ準優勝者がいるのも無理のないことだろう。

次にいつ決勝の舞台に辿りつくことが出来るのか。

そのチャンスが無限にあるわけではないことは明らかだ。

そして、そのグランドスラムの決勝戦において、1度ではなく、2度3度と続けて負けてしまう選手もいる。


オープン化以降のグランドスラムでの決勝戦の歴史を振り返ると、今のところグランドスラムの決勝での最大の連敗は5連敗である。過去に4人の選手がその長い連敗を経験しているが、不思議なことに全員が女子選手である。

その4人の選手とは、オーストラリアのイボンヌ・グーラゴング、スペインのアランチャ・サンチェス、スイスのマルチナ・ヒンギス、アメリカのビーナス・ウィリアムズである。勝敗は別にしても、グランドスラムの決勝まで5回勝ち上がれるというだけでその選手の実力の確かさを示しているとも言えるだろう。

実際、この4人の選手は複数回のグランドスラム優勝を経験しており、最も少ないサンチェスでも4回、ヒンギスは5回、ビーナスとグーラゴングは実に7回もの優勝を経験している。たとえグランドスラム決勝で連敗をしていたとしても、彼女たちが偉大な勝利者たちであるということも間違いない。

マーガレット・コート、ビリー・ジーン・キング、そしてイボンヌ・グーラゴング


オープン化後すぐの時期に活躍したオーストラリアのイボンヌ・グーラゴングは、1971年に全米以外の3度のグランドスラム決勝に進出し、2度優勝している。

翌1972年にも、やはり全米以外の3度の大会で決勝に進出したが、全豪でバージニア・ウェイド、全仏とウィンブルドンでアメリカのビリー・ジーン・キングに敗れてしまい、3大会連続の準優勝に終わる。

そしてグーラゴングは、次の1973年にも地元の全豪と初めて進出する全米の2回、グランドスラムの決勝戦に進出するが、2回とも同じオーストラリアのマーガレット・コートに敗れてしまい、前の年と合わせてグランドスラムの決勝戦での5連敗を喫することとなる。

グーラゴングの優勝を合わせて4度阻んだことになるコートとキングは、まさにこの時代を支配していた選手と言えるだろう。プロ選手が参加するようになった1968年のオープン化以降、1973年までの6年間で開催された23回のグランドスラムのうち、コートとキングのどちらかが決勝に進出していた大会は実に20回にも上る。この間、コートは年間グランドスラムも達成した6連続優勝を含むグランドスラム11勝、そしてキングも6勝(74年以降にさらに2勝をあげる)をあげている。

特に二人のキャリア終盤にあたる1972年の全仏オープンから1973年の全米オープンまでは、7大会連続でキングか、コートのどちらかが優勝するという状態が続いていた。これら7つのグランドスラムの決勝戦でキングとコートの直接対決は一度もなく、キングは7大会中、4度決勝に進出して4回、コートは3度決勝に進出して3回のグランドスラムタイトルを獲得している。

グーラゴングのグランドスラム決勝戦での連敗は丁度この時期に重なってしまった。

そして、コート、キングがツアーを離れた後、今度はエバートやナブラチロワという新世代のチャンピオンが時を置かずに登場して来て、グーラゴングは彼女たちとグランドスラムのタイトルを争うようになる。

コートとキングの全盛期に2回、エバートとナブラチロワの時代に5回、通算で7回ものグランドスラムタイトルを獲得したグーラゴングが名選手であることは間違いない。しかし、立て続けに登場する強力なライバル達に苦戦したことも事実だろう。

オープン化以降、グランドスラムの決勝を10回以上戦った女子選手の中で、グーラゴングの7勝11敗(勝率.388)という数字は、4勝8敗(勝率.333)のアランチャ・サンチェスに次いで2番目に低い数字となっている。しかし一方で、グーラゴングのグランドスラムでの準優勝11回という数字は、エバートの15回、ナブラチロワの14回に次いでオープン化以降3番目に多い。たとえ準優勝だとしても、この数字を積み上げることが簡単ではないことは言うまでもないだろう。

→(「グランドスラム決勝での連敗(2):アランチャ・サンチェス」)
→(「グランドスラム決勝での連敗(3):マルチナ・ヒンギス」)
→(「グランドスラム決勝での連敗(4):ビーナス・ウィリアムズ」)

■イボンヌ・グーラゴング グランドスラム決勝戦の勝敗

大会勝敗対戦相手
1971全豪負けマーガレット・コート
1971全仏勝ちヘレン・グーレイ
1971ウィンブルドン勝ちマーガレット・コート
1972全豪負けバージニア・ウェイド
1972全仏負けビリー・ジーン・キング
1972ウィンブルドン負けビリー・ジーン・キング
1973全豪負けマーガレット・コート
1973全米負けマーガレット・コート
1974全豪勝ちクリス・エバート
1974全米負けビリー・ジーン・キング
1975全豪勝ちマルチナ・ナブラチロワ
1975ウィンブルドン負けビリー・ジーン・キング
1975全米負けクリス・エバート
1976全豪勝ちレナータ・トマノワ
1976ウィンブルドン負けクリス・エバート
1976全米負けクリス・エバート
1977全豪(年末)勝ちヘレン・グーレイ
1980ウィンブルドン勝ちクリス・エバート

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