新世代の現在地。シナーとシフィオンテクを追う2001年生まれ

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2001年生まれのシナーとシフィオンテク

男子はシナーとアルカラス、女子はサバレンカとシフィオンテク。2強というほどの支配力はなかったかもしれないが、2024年のツアーが男女ともにこの2人の選手たちが中心だったことは間違いないだろう。2024年の4大大会では、男子はシナーとアルカラスが2勝ずつで分け合い、女子はサバレンカが2勝、シフィオンテクは1勝をあげている。

そして、シナーとシフィオンテクは奇しくも同じ2001年生まれである。

日本であれば、大学を卒業して社会人1年目を過ごした23歳にあたるのが、2001年生まれの世代である。普通の社会人1年目の場合、いよいよこれから自立した生活が始まるところだが、テニス選手の場合、世代のトップレベルの選手たちはプロツアー生活をすでに数年過ごしており、優劣もはっきりとつき始めている。

同世代の先頭を走っているシナーとシフィオンテクを追っている2001年生まれ世代にはどんな選手たちがいるのだろうか。

独走するシナー

2001年生まれの男子選手のなかで、シナーに匹敵する実績を残している同世代の選手は存在しない。

シナーは常にこの世代のトップを走り続けて来ている。18歳になる年にトップ80位に入り、19歳になる年にはトップ40位、そして20歳になる2021年にはトップ10入りという、突出したステップアップを果たしている。そこからさらに大きく飛躍した2024年は、グランドスラムを2勝、マスターズは3勝(通算4勝)、ツアーファイナルまでも制し、ランキング1位に君臨している。現在のシナーは、2001年生まれの同世代だけでなく、あらゆる選手にとって目標となる存在となっている。

早い時期にトップ100入りしたナカシマとセルンドロ

シナーがトップ10入りを果たした2021年にトップ100入りを果たしたのが、ナカシマとセルンドロの2人だ。2人ともすでにツアー優勝を成し遂げ、特にナカシマはUSオープンでベスト16に入るなど、大きな大会で勝ち抜く力を付けて来ている。ただ、セルンドロはATPツアーのデビュー戦で優勝するという快挙を成し遂げたものの、まだグランドスラム本戦への出場を果たせておらず、もう一段のジャンプアップを果たせずにいる。

シナーを追うドレイパー、レヘチカ

現在のランキングで38位のナカシマよりもシナーに近い位置につけているのが、15位のドレイパー、そして28位のレヘチカだ。特にドレイパーは今年のツアーで優勝を2回飾り、USオープンでは準決勝まで進出して、この大会を優勝することになるシナーに敗れている。2021年には地元イギリスの大会で2つのタイブレークを制してシナーに勝利したこともあり、ツアーでの通算対戦成績は1勝1敗の五分だ。まだ差はあるとはいえ、2001年生まれの選手のうち、現時点でシナーの後ろを走っているのはドレイパーだろう。

レヘチカも今年ツアー初優勝を遂げ、マスターズのマドリッドでもベスト4に入るなど、シーズンの前半は良かったが、そのマドリッドで負った故障のためにツアーを一時離脱してからは大きな成果を残すことは出来なかった。故障した時期も悪かったが、グランドスラムで上位に進出することができなかったのも印象の薄さにつながっているかもしれない。まだツアーでシナーに勝利したことはないが、トップ10選手は何度も破っている。来季は自らがトップ10入りを目指すシーズンとなるだろう。

ツアー優勝を目指す選手たち

ランキングの上位で戦う、シナー、ドレイパー、レヘチカ、ナカシマの4人に続くのは、イタリアのアルナルディ、アルゼンチンのナヴォーネ、オーストラリアのヒジカタとなるだろうか。彼らは3人とも10代の時に目を見張るような実績を残してはいないものの、20歳を過ぎてから成長しており、アルナルディはマスターズのモントリオールでは復帰した錦織を破ってベスト4まで進出している。来年、ATPツアーでの初優勝、グランドスラムでの上位進出を目指す位置にいると言えるだろう。

それに続くのが、カナダのディアロ、イギリスのファーンリー、フィンランドのヴィルタネンの3人だろう。100位以内でシーズンを終えられそうだが、来年も主戦場はチャレンジャーとなる可能性は高い。ディアロは10月のアルマトゥイでトップ100の選手を4人破って決勝に進出し、ロシアのハチャノフに惜敗しての準優勝を果たしており、ブレイクスルーの可能性を感じさせる。

苦戦するジュニア時代の有望選手

全仏ジュニアとウィンブルドンジュニアの2冠を達成し、全豪ジュニアでも準優勝という、ジュニア時代に極めて優れた実績を残している台湾のツェン、2019年のジュニアNO.1であるアルゼンチンのティランテ、10代の時はこの世代屈指の選手の1人だったクロアチアのアジドゥコビッチらは、今シーズン決してひどいシーズンを過ごしたわけではない。

ただ、シナーはもちろん、ドレイパーやレヘチカといった現在の世代のトップからは差を付けられたシーズンとなってしまった。来シーズンの躍進を期しているだろうが、100位前後にいる彼らは最も厳しい競争にさらされることになる。まずは少しでもATPツアーレベルで勝利を重ねていくしかないだろう。

日本人男子トップは齋藤惠佑

この世代の日本人男子選手のトップは齋藤惠佑だ。世界レベルで見てしまうと、この世代で突出した戦績があるわけではないが、全てのジュニアグランドスラムへの出場を果たしており、大阪で開催されている世界スーパージュニアでは優勝も成し遂げている。全国選抜、中学生選手権など、全国タイトルを複数持っており、ジュニア時代に国内屈指の存在だったエリート選手と言えるだろう。ATPツアーでのランキングは最高で583位と上位までにはまだ差があるが、今年、ITF大会で初優勝しており、来期のさらなる上昇に期待が持てそうだ。

2001年生まれの男子有力選手

NameCountryBirthAgeRank(2024/12/9)Career High RankTitles
Jack DraperGreat Britain2001/12/2223
15152
Juan Manuel CerundoloArgentina2001/11/1523139791
Jiri LeheckaCzechia2001/11/82328231
Gabriel DialloCanada2001/9/242387860
Jannik SinnerItaly2001/8/16231118
Chun-Hsin TsengChinese Taipei2001/8/823119830
Brandon NakashimaUnited States2001/8/32338351
Jacob FearnleyGreat Britain2001/7/152399890
Otto VirtanenFinland2001/6/212394910
Keisuke SaitohJapan2001/4/29235845830
Thiago Agustin TiranteArgentina2001/4/1023117900
Rinky HijikataAustralia2001/2/232373620
Mariano NavoneArgentina2001/2/272347290
Matteo ArnaldiItaly2001/2/222337300
Duje AjdukovicCroatia2001/2/5231431050

時代を代表する選手となる可能性があるシフィオンテク

2001年生まれの女子選手の中で、23歳にして全仏オープンを4回、USオープンを1回の合計5回ものグランドスラムを制しているシフィオンテクはこの世代どころか、数年上と数年下の選手のキャリアにも影響を与える存在だろう。現在の実績でシフィオンテクに匹敵できる選手は2001年生まれの女子選手には存在しないが、男子よりも選手生活が短い傾向にある女子選手にとって、23歳という年齢はツアーの主力とも言える年齢に差し掛かっており、トップ100位に入っている選手の数(男子10人、女子15人)、ツアータイトルを持っている選手の数(男子5人、女子9人)で同世代の男子を上回っている。

急成長の女子トップ10、ナバーロ

同世代のトップを独走するシフィオンテクに続くのは、最新ランキングで8位につけているアメリカのナバーロだ。どちらかというと遅咲きであるナバーロは、昨年まではまだITFでもプレーする選手だったが、今年初めのWTA250のホバートでツアー初優勝を果たすと、ウィンブルドンでベスト8、USオープンでベスト4という結果を残してトップ10入りを果たした。

今シーズンはガウフに2勝1敗、サバレンカにも1勝2敗とトップ選手を相手にしても戦えることも証明している。WTAのMIPに選ばれたのも納得の結果だろう。ナバーロがシフィオンテクと前回対戦したのは2018年までさかのぼらなければならず、その時はシフィオンテクが完勝しているが、シフィオンテクもナバーロもその時とはだいぶ違う選手となっているだろう。ナバーロがこのまま結果を残し続ければ、2025年にシフィオンテクと対戦する機会は確実に訪れるはずだ。

かつての世代トップ選手#1:ポタポワ

ナバーロに続くのが、ロシアのポタポワとアメリカのアニシモワということになる。この2人が現在の位置に満足しているとは思えない。なぜなら、彼女たちは2人ともこの世代屈指のスター選手で、WTAツアーに出場し始めた当初はランキングでシフィオンテクを上回っていたのだ。

当然、その前のジュニア時代の実績でも2人の方がシフィオンテクを上回っている。17歳の時にウィンブルドンジュニアを制したシフィオンテクも有望視される選手であったのは間違いないが、ポタポワはその2年前の15歳でウィンブルドンジュニアを優勝し、アニシモワも16歳になる年にUSオープンジュニアを制覇している。そして2人ともジュニア時代に1度だけシフィオンテクと対戦もしており、2人ともにシフィオンテクに勝利しているのだ。

ただ、今は大きな差がついている。

グランドスラムを5度制覇しているシフィオンテクに対し、ポタポワは今年の全仏オープンでベスト16に入ったのが最高で、あとは3回戦どまりとなっている。しかも、その全仏オープンで敗れた相手がシフィオンテクでスコアは0-6、0-6のダブルベーグルだった。ジュニア時代にポタポワがシフィオンテクと対戦して勝利したのが、全仏オープンジュニアだったのは奇遇というほかない。ポタポワにとってシフィオンテクは、まずはゲームを取るところから始めなければならない相手となってしまった。

かつての世代トップ選手#2:アニシモワ

シフィオンテクと比べてしまうとまだ差があるとはいえ、キャリアと共にランクアップして来ているポタポワとは異なり、アニシモワの場合は少し複雑な状況となっている。

アニシモワは18歳になる2019年にサバレンカを破って全豪でベスト16、4月にはツアー初優勝、全仏オープンではシフィオンテクを破って来た前年チャンピオンのハレプをストレートで倒し、その後、優勝することになるバーティにフルセットで敗れてベスト4という快挙を成し遂げる。この年にランキングはキャリアハイの21位まで上昇したが、この年にコーチでもあった実父を亡くすなどの不幸もあり、その後は伸び悩み、2023年の春の終わりに休養を余儀なくされてしまった。

2024年に373位からスタートして、地道に順位を上げ、WTA1000のトロントでサバレンカ、ナバーロを破り、決勝ではペグラに敗れたものの準優勝を達成して、ランキングを36位まで戻してきた。やはり元々の力があるということなのだろう。そして、アニシモワはまだWTAツアーではシフィオンテクと対戦したことがない。来シーズン、2人の初対決の機会が訪れるのか、そしてそれがどのような試合になるのか、注目している人は多いかもしれない。

何かと縁がある中国の2人

中国の2人、ワン・シンユーとワン・シユも同じ2001年生まれだ。ジュニア時代はUSオープンジュニアのタイトルを持っているワン・シユの方が優れていたと言えるかもしれないが、ワン・シンユーもグランドスラムジュニアでベスト4が2回と高い実績を残している。出身国と年齢が同じというだけでなく、日本語表記でも英語表記でも名前のスペルがかなり似ているこの2人は、2人でペアを組んだウィンブルドンジュニアで優勝していることもあって、実に強い縁を感じさせる。

この2人ががともにトップ100入りを果たしているというのはなかなか感慨深いものがある。今話題の中国の選手と言えば、彼女たちの1つ年下の2002年生まれで、今はトップ10のジェン・チンウェンということになってしまうだろうが、ワン・シンユーとワン・シユの2人も、10代から活躍をして来た注目の選手である。シフィオンテクを追うというより、すでにグランドスラムで準優勝1回、ベスト8まで2回たどりついているジェン・チンウェンを追う形にはなってしまうのかもしれないが、まずはグランドスラムでのベスト8進出を果たしたいところだろう。

2024年に躍進したルル・サン

2024年に活躍した2001年生まれの選手として、ニュージーランドのルル・サンを挙げないわけにはいかない。シーズンの初めに200位台でスタートしたランキングは、ウィンブルドンでのベスト8進出で自己最高の39位にまで上昇した。ただ、ウィンブルドンの後、モンテレイで初のツアー決勝まで進出はしたものの、ツアータイトルはまだ無く、サバレンカ、シフィオンテクの女子ツートップとの対戦もまだ経験していない。大きな大会で再び輝くことが出来るのか、トップクラスの選手に対抗できる力を示すことが出来るのか、2025年は2024年の結果がフロックでないかが問われるシーズンとなるだろう。

今シーズン、WTAツアーで初優勝を遂げた新鋭

WTAツアーで優勝出来る力を持つ選手は、やはり無視できない存在と言えるだろう。アメリカのスターンズはラバトでWTAの初タイトルを獲得している。2024年のインディアンウェルズの2回戦でサバレンカに勝利するまであと一歩のところまで追いつめた実力が本物であることを証明したといえるだろう。10代の頃に目立った活躍をしてきているわけではないが、ランキングは着実に上昇しており、2024シーズンはキーズやカサトキナなどトップ20レベルの選手にも勝利をあげている。上位選手にとっても油断できない存在になって来たと言えるかもしれない。

イギリスのカルタルも2024年シーズンに初優勝を遂げた選手の1人だ。2023年に200位台だったランキングを84位まで上げることに成功した。ただ、これまでの主戦場がITFだっただけに、WTAツアーの強豪選手を相手にどこまで活躍できるのか、2025年はその実力が問われるシーズンになるだろう。

すでにWTAツアーで優勝を果たしている実力者たち

セルビアのダニロビッチ、フランスのコチャレットの2人は10代から活躍している選手で、2人揃って2024年の全仏オープンでベスト16に入っている。2人ともWTAでのツアータイトルを既に獲得しており、ダニロビッチは今シーズンにキャリア2個目のWTAタイトルも獲得している。大きな大会で上位進出が出来れば、シフィオンテクを追う選手として期待される存在になれるかもしれない。

コロンビアのオソリオも10代から活躍している選手の1人で、キャリアハイのランキングでは33位に到達している。地元コロンビアのボゴタで2つのツアータイトルも持っており、2021年からは4年連続でトップ100位以内でシーズンを終えていて安定感も備えている。ただ、大きな大会での活躍が少なく、グランドスラムではウィンブルドンで3回戦に1度進出しただけにとどまっている。ステップをもう1段上がるためのブレイクが期待される選手の1人だろう。

トップ100位に入ってはいるものの、大きな大会での結果を残せていない3人

シフィオンテクがウィンブルドンジュニアで優勝した2018年のジュニアNO.1選手だったのがフランスのビュレルだ。キャリアハイではランキングも42位に達しているのだが、グランドスラムでは全豪オープンでの3回戦進出が最高となっており、大きな大会での活躍は出来ていない。ロシアのラヒモア、アメリカのバプティストの2人も10代の頃から有力な選手で、ランキングも着実に上げて来て、トップ100位には入っているのだが、今のところは大きな大会で結果が残せていない。2025年シーズンに飛躍への切っ掛けをつかむことが出来るだろうか。

日本人女子トップはエースの内島

この世代の日本人女子選手のトップは、内島萌夏である。WTAランキングは堂々の55位。ランキングでも今が自己ベストという、期待のホープである。そして、いまだ復帰途上の感がある大阪なおみに代わる、日本女子の現エースでもある。

内島は競技としてのテニスを始めるのが比較的遅く、世界的にはトップジュニアと言える実績は残していない。しかし、国内では競技歴が浅い内からトップ選手となっており、潜在能力の高さを逆に感じさせる結果を残している。

ジュニアを卒業したあとも、ITF大会で3大会連続優勝するなど、着実に実力を付けてきている。すでに全てのグランドスラムの本戦に出場しており、まだ結果は2回戦止まりとはいえ、今後の躍進が期待される存在なのは間違いない。

2001年生まれの女子有力選手

NameCountryBirthAgeRank(2024/12/16)Career High RankTitles
Camila OsorioCOLOMBIA2001/12/2223
60332
Hailey BaptisteUNITED STATES2001/11/32392800
Sonay KartalGREAT BRITAIN2001/10/282384841
Peyton StearnsUNITED STATES2001/10/82347431
Xinyu WangCHINA2001/9/262337320
Amanda AnisimovaUNITED STATES2001/8/312336212
Kamilla RakhimovaRUSSIA2001/8/282361610
Moyuka UchijimaJAPAN2001/8/112355550
Iga SwiatekPOLAND2001/5/31232122
Emma NavarroUNITED STATES2001/5/1823881
Lulu SunNEW ZEALAND2001/4/142340390
Anastasia PotapovaRUSSIA2001/3/302335212
Xiyu WangCHINA2001/3/282398491
Clara burelFRANCE2001/3/242399420
Elisabetta CocciarettoITALY2001/1/252352291
Olga DanilovicSERBIA2001/1/232351512

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