クレーキングNO.2は誰なのか?

データ

史上最高のクレーキング=ナダル


今年の全仏ではナダルが見事な復活を果たし、通算で10回目となる優勝を成し遂げた。

10回の優勝。これは本当に素晴らしい成績だ。


オープン化以降、四大大会のタイトルを通算で10回以上獲得した選手は、ボルグ、サンプラス、フェデラー、ナダル、ジョコビッチの5人しかいない。全仏だけで10回の優勝というナダルの成績は驚愕というほかないだろう。

ATPツアーレベルでナダルのクレー通算成績は389勝35敗。勝率はなんと91.7%である。クレー大会でのタイトル数は53個。さらに全仏だけで見るとナダルの成績は79勝2敗。13度出場して、優勝が10回、ベスト8が1回、ベスト16が1回、棄権が1回である。改めて本当に凄まじい成績である。

史上最高のクレーキングがナダルであることはもはや疑いようもないだろう。

では、クレーキングのナンバー2を決めるとするならば、それは誰になるのだろうか?

■クレーコートでの成績(クレー主要選手)
全仏優勝回数クレーコート勝率クレーコートタイトル数クレーコート勝利数クレーコート敗北数
ナダル1091.75338935
ボルグ686.03025141
レンドル381.12832776
ビラス180.349659162
ジョコビッチ1801318847
コナーズ077.61220158
ナスターゼ177.42733397
ホセ・ルイス・クラーク077.42130188
ローズウォール177.478224
オランテス077.130501149
ビランデル377.12026378
ムスター176.940422127
モヤ170.216337143
アンドレス・ゴメス170.216322137
イゲラス069.515378166
エディー・ディブス074.314370128
フェレール071.112323131
クエルテン370.31518980
クーリエ268.9511552
ブルゲラ268.713296135
ヤン・コデシュ268.95239108

ボルグはクレーコーター?


クレー最高の大会である全仏の男子シングルスにおいて、ナダルに次に多くトロフィーを掲げているのは、こちらも6回もの優勝を成し遂げているビョルン・ボルグである。

しかも、ボルグのクレーでの勝率は86.0%でナダルとは差があるものの、ナダルに次ぐ史上2位の成績となっている。ナダルの勝率は空前絶後なレベルで突出してしまっているので、普通に考えればボルグの成績も実に素晴らしい。全仏では6回の優勝の他にベスト8が1回。ボルグは8回しか全仏に出場しておらず、全仏での通算成績は49勝2敗で全仏での勝率は96.1%にもなっている。79勝2敗で勝率97.5%という結果を残しているナダルの出現以前であれば、全仏で圧倒的な強さを発揮したのはボルグということで間違いないだろう。

しかし、ではボルグがクレーキングだったのかというと、そうではないという意見も多いのではないだろうか。

確かにボルグはクレーで恐ろしいほどの強さを発揮したが、それ以外のサーフェスのコートでも強かった。ボルグの通算タイトル数64のうち、クレーのタイトルは30個、割合にすると46.9%である。クレー以外のサーフェスでの優勝回数の方が多いのだ。

ボルグは6回の全仏優勝の他、ウィンブルドンでの5回の優勝、しかも5連覇を達成している。歴史に残る名勝負とされている1980年のウィンブルドンでのマッケンローとの決勝戦のイメージの強さもあって、ボルグにはクレーコーターという印象が少し薄いのかもしれない。

もちろん、キャリアグランドスラムを達成しているナダルもクレー以外のサーフェスでも強いのだが、ナダルの通算タイトル数73のうち、クレーのタイトルは53個でその割合は72.6%に達している。グランドスラムの戦績で見ても、ナダルのグランドスラム通算勝利数15のうち、10回が全仏、ウィンブルドンと全米で2回ずつ、全豪で1回と、明らかに全仏に偏っているのだ。

ボルグがプレーした時代は全豪が芝だったり、全米は芝から一時的にクレー、そして現在と同じハードコートへとサーフェスが移り変わっていったり、ATPツアーで現在は使用されなくなったカーペットの大会がたくさんあったりして、ツアーを取り巻く環境が現在とはだいぶ異なっていたという点は考慮する必要があるだろう。しかし、ナダル以上にクレーに縛られない活躍を見せたボルグをクレーキングと呼ぶには少しためらいもある。

ナダルも追いつけないビラスの記録


ひとまずボルグを保留しておき、他にクレーキングの候補を探してみると、次に名前が上がるのはアルゼンチンのギリェルモ・ビラスではないだろうか。

なにしろビラスはクレーコートで通算659勝とオープン化以降で最多となる勝利数を上げているのだ。この数字がいかに優れているかというのは、クレーコートでの通算勝利数が2位であるスペインのマニュエル・オランテスの勝利数が501勝であることからも分かる。プレー期間の短かったボルグなどはクレーで通算251勝にとどまっている。そして、今のところ389勝でクレーの通算勝利数で4位につけているナダルがこの数字に追いつけるかというと、これがかなり厳しいのだ。

1952年生まれのビラスはオープン化当初の1968年からツアーに参戦しており、1989年まで22年もの長い期間に渡って活躍した。1991年と1992年に短期間復帰しているので、40歳過ぎまでプレーを続けたということになる。未勝利に終わった短期復帰の2年を除き、実働22年として計算すると1年あたり約30勝である。

そして、ナダルのこれまでのクレーコートの年間平均勝利数は約24勝なのだ。今年も全仏の優勝でちょうど24勝目だった。そして今年のクレーコートシーズンは終了である。今年はローマで取りこぼしているので、勝ち星に上積みの余地が無い訳ではないが、モンテカルロ、バルセロナ、マドリードに続いて全仏でも優勝を成し遂げておいて、なおこれ以上を望むのは30歳を超えたナダルには酷というものだろう。

ビラスは彼のキャリアハイライトとなる1977年には、ツアーで16個ものタイトルを獲得し、そのうち14個がクレーの大会だった。そしてビラスはこの年クレーでなんと90勝以上を上げているのだ。ナダルがこのようなペースで勝利を上げるのは現在のツアー構成上、不可能だろう。今後もナダルがクレーで年平均24勝上げたとしても、ビラスの659勝に追いつくためには11年以上かかることとなる。怪我さえなければ、ナダルがクレー通算勝利数で現在3位であるムスターの422勝を超えることは十分可能だろうが、2位のオランテスの501勝は厳しいかもしれない。ビラスの659勝に至っては、ほとんどアンタッチャブルな記録だろう。

そして、ビラスは単にクレーでたくさん勝利をしたという選手ではない(それだけでも十分すごいのだが)。クレーでの通算勝率は80.3%でナダル、ボルグ、レンドルに次いで史上4位となっている。クレーでの勝率が通算で80%を超えているのは今のところ他に80%ちょうどのジョコビッチがいるだけである。そして、ビラスのクレーのタイトル数は49個で53個のナダルに次いで2位、クレーコート以外も含めた優勝回数は62回のため、クレーでの優勝比率はナダルを上回る79%という、まさにザ・クレーコーターなのだ。全仏の優勝は1回だが、準優勝は3回あり、時代を代表するクレーコートプレーヤーと言えるだろう。

しかし、ビラスをクレーキングと呼ぶには1つだけ難点がある。

同じ時代にボルグがいたのだ。

ビラスはボルグと対戦して、5勝18敗。
途中に11連敗も含み、圧倒的に負け越してしまっているのだ。

しかも、ビラスの5勝のうち、3勝はハードコートでの試合である。さらにビラスの全仏での3回の準優勝のうち、2回はボルグに敗れたものなのだ。

相性もあるのだろうが、ビラスはクレーコートでボルグに勝つことがなかなか出来なかった。

ナダルに次ぐクレーキングは誰か?

、、、やはり、ボルグとしておくのが無難かもしれない。

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